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造血器腫瘍の病因と病態

—がん化の原因を標的とした治療の開発を目指して—

☆ チロシンキナーゼ*の異常活性化は造血器腫瘍を含む多くのがんで共通して見られる異常である。(*:たんぱく質のチロシン残基をリン酸化する酵素)


☆ 急性骨髄性白血病(AML)にはレセプター型チロシンキナーゼc-Kit, FLT3が高発現している。


☆ c-Kit, FLT3は共にその膜直下領域、キナーゼ領域2(activation loop領域)の突然変異により恒常的活性化を示す。


☆ FLT3の活性化変異はAMLの約30%に認められる、同白血病で最も高頻度の遺伝子変異である。c-Kitのキナーゼ領域活性化変異はマスト細胞腫瘍に関連し、膜直下領域変異は消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal stromal tumor; GIST)の90%に認められる。


☆ FLT3の膜直下領域変異internal tandem duplication (ITD)はAMLの予後不良因子である。


☆ FLT3-ITDにより特異的に発現が変化するmRNAのmicroarray解析の結果、?増殖・生存シグナルの一つであるSTAT3/5経路の標的遺伝子であるpim-2,SOCS3の発現亢進を認め、?C/EBP?、PU.1などの血液分化に必須の転写因子の発現抑制が認められた(図1)。FLT3-ITDは白血病発症に必要な2つの異常である、増殖・生存の亢進と分化の阻害両者に関与していることが明らかとなった。


☆ 慢性骨髄性白血病(CML)の原因癌遺伝子である異常チロシンキナーゼBCR-ABLを抑制するImatinib mesylate(グリベック、Glivec、Gleevec)は、この薬だけでCMLの治癒をもたらす可能性を持つ薬である。グリベックはc-Kit阻害剤でもあり、c-Kit変異によるがんである、GISTにも効果を示す。グリベックはFLT3阻害活性を有さない。現在新規のAML治療薬としてFLT3阻害剤が開発中である。


☆ 阻害剤の欠点(薬剤耐性):c-Kitは変異の部位によってグリベックへの感受性が異なりキナーゼ領域変異はグリベック抵抗性である(図2)。またCML治療中にBCR-ABL突然変異が生じグリベック耐性が誘導される例がある。


☆ 我々は現在の多くの阻害剤が標的としているATP結合領域以外に標的となりうる領域を見出し、既存の阻害剤に抵抗性になっても使える薬の開発を目指している。


図1

図2