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大阪大学大学院医学系研究科
血液・腫瘍内科学

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研究グループ

細胞遺伝子治療・免疫療法グループ(責任者:保仙)

リンパ球グループ(責任者:織谷)

造血幹細胞グループ(責任者:横田)

Anamorsinグループ(責任者:柴山)

赤血球グループ(責任者:西村)

血小板グループ(責任者:柏木)


細胞遺伝子治療・免疫療法グループ(責任者:保仙)

血液疾患に対する治療は様々な基礎医学の進歩の成果を取り入れることにより、この半世紀の間に目覚ましい進歩を遂げました。この10年の間に最も進歩するであろうと考えられているのがCAR T細胞療法などの細胞遺伝子治療・免疫療法の分野です(図1)。我々は血液がんに特異的に発現する細胞表面抗原を同定し、それを標的とした抗体療法・CAR-T細胞療法を開発することを一貫して行っており、その成果の一つである多発性骨髄腫に対する新規CAR-T細胞は企業による治験が間もなく行われます(図2)。血液がんだけでなく様々ながんに対するCAR T細胞療法の開発をすでに開始しております。 また、今後は免疫学のメッカである阪大で生み出された様々な新知見を応用した新規細胞遺伝子治療・免疫療法の開発も目指しています。


リンパ球グループ(責任者:織谷)

造血器腫瘍の病因と病態
—がん化の原因を標的とした治療の開発を目指して—

☆ チロシンキナーゼ*の異常活性化は造血器腫瘍を含む多くのがんで共通して見られる異常である。(*:たんぱく質のチロシン残基をリン酸化する酵素)


☆ 急性骨髄性白血病(AML)にはレセプター型チロシンキナーゼc-Kit, FLT3が高発現している。


☆ c-Kit, FLT3は共にその膜直下領域、キナーゼ領域2(activation loop領域)の突然変異により恒常的活性化を示す。


☆ FLT3の活性化変異はAMLの約30%に認められる、同白血病で最も高頻度の遺伝子変異である。c-Kitのキナーゼ領域活性化変異はマスト細胞腫瘍に 関連し、膜直下領域変異は消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal stromal tumor; GIST)の90%に認められる。


☆ FLT3の膜直下領域変異internal tandem duplication (ITD)はAMLの予後不良因子である。


☆ FLT3-ITDにより特異的に発現が変化するmRNAのmicroarray解析の結果、?増殖・生存シグナルの一つであるSTAT3/5経路の標的遺 伝子であるpim-2,SOCS3の発現亢進を認め、?C/EBP?、PU.1などの血液分化に必須の転写因子の発現抑制が認められた(図1)。 FLT3-ITDは白血病発症に必要な2つの異常である、増殖・生存の亢進と分化の阻害両者に関与していることが明らかとなった。


☆ 慢性骨髄性白血病(CML)の原因癌遺伝子である異常チロシンキナーゼBCR-ABLを抑制するImatinib mesylate(グリベック、Glivec、Gleevec)は、この薬だけでCMLの治癒をもたらす可能性を持つ薬である。グリベックはc-Kit阻 害剤でもあり、c-Kit変異によるがんである、GISTにも効果を示す。グリベックはFLT3阻害活性を有さない。現在新規のAML治療薬として FLT3阻害剤が開発中である。


☆ 阻害剤の欠点(薬剤耐性):c-Kitは変異の部位によってグリベックへの感受性が異なりキナーゼ領域変異はグリベック抵抗性である(図2)。またCML治療中にBCR-ABL突然変異が生じグリベック耐性が誘導される例がある。


☆ 我々は現在の多くの阻害剤が標的としているATP結合領域以外に標的となりうる領域を見出し、既存の阻害剤に抵抗性になっても使える薬の開発を目指している。


図1

図2


新しいインターフェロンIFN-ζ/Limitinの発見と展開

マウスストローマ細胞株BMS2.4が白血病細胞株の増殖を抑制することが報告されてから長い間、どのような分子が増殖抑制に関与しているかは不明 でした。我々は、BMS2.4細胞株からcDNAライブラリーを作製しWEHI3骨髄性白血病細胞株の増殖を抑制することを指標にした発現クローニングを 行なった結果、新規分子Limitin (EMBL/GenBank/DDBJ: AB024521)を同定しました。LimitinがIFN-αやIFN-βと塩基配列相同性を有する事実、LimitinがIFN-ζ/ζ受容体と結合 する事実、Limitinが抗ウイルス活性を有する事実に基づき、2003年the Nomenclature Committee of the International Society for Interferon and Cytokine ResearchにおいてLimitinは新しいI型IFNでありIFN-ζと命名されました。


我々は、IFN-ζ/LimitinとIFN-αの生理活性に関して比較しました。細胞障害性Tリンパ球キラー活性増強作用・MHC class I誘導作用・腫瘍細胞増殖抑制作用に関してIFN-ζ/LimitinはIFN-αと同等の生理活性を示したことより、IFN-ζ/Limitinは IFN-αと同等の直接腫瘍細胞に対したあるいは免疫系を介した抗腫瘍効果を発揮すると考えられます。しかし、IFN-αと異なりIFN- ζ/Limitinは正常骨髄球前駆細胞や正常赤芽球前駆細胞の増殖に影響を及ぼさず、正常巨核球前駆細胞や正常リンパ球前駆細胞の増殖抑制にはIFN- αに比較して大量のIFN-ζ/Limitinを必要としました。このようにIFN-ζ/LimitinはIFN-αと比較して骨髄抑制作用が少ないとい う特徴を有していました。


IFNは、慢性骨髄性白血病・慢性リンパ性白血病・多発性骨髄腫などの血液疾患をはじめ多くの癌疾患およびウイルス肝炎の治療薬として使用されてい ます。しかし、IFNには骨髄抑制や精神作用などの副作用が存在し、時にIFNの減量や中止が必要となります。IFN-ζ/Limitinのように骨髄抑 制作用が少なければ、大量投与や長期投与が可能となり、治療成績の向上が期待できます。さらに、しばしば白血球減少や血小板減少を伴う症例や他の抗腫瘍剤 との併用時には、骨髄抑制作用の少ないIFN-ζ/LimitinはIFN-αやIFN-βと比較して優位であると考えます。


リンパ球支持機構の解析

骨髄ストローマ細胞は種々のサイトカインを分泌すると伴に細胞表面上に種々の接着分子やマトリックス構成分子を発現することにより、リンパ球前駆細 胞に分化・増殖のシグナルを与えるだけでなく、骨髄での定着あるいは分化に伴う移動を調節しています。このように、骨髄ストローマ細胞は、日々のリンパ球 産生を支持するだけでなく必要に応じ産生を亢進し或いは過剰反応に対し産生を低下させ、一定の血液状態の保持に重要な役割を果たしていると考えられていま す。我々は骨髄ストローマ細胞によるリンパ球調節機構の破綻が一部の免疫不全症や自己免疫疾患等のリンパ球量的異常を示す疾患の一因となり得ると考えてお り、主に骨髄ストローマ細胞により産生されるリンパ球制御に関わる分子の同定とその機能解析について研究を行ってきました。


(1) 慢性関節リウマチや多発性骨髄腫患者由来ストローマ細胞株が健常人由来ストローマ細胞株に比し高いBリンパ球前駆細胞支持能を持つ事を報告し、患者由来ストローマ細胞株優位に発現する分子としてBST-1及びBST-2 (Bone Marrow Stromal Cell Antigen-1, 2) を新しくクローニングしました。その後の研究により、BST-1は一部のムチランス型慢性関節リウマチ患者血清及び関節液で高値を示す事が明らかにされました。


(2) ストローマ細胞が産生するサイトカインや表面分子は多種多様であり、個々の分子に特異なアッセイ系を確立することは困難です。そこで我々はBリンパ球前駆細胞と結合するストローマ細胞上分子を同定するクローニング方法を樹立しました。この方法を用いて、Bリンパ球前駆細胞と結合能を持つ6種の細胞外マトリックス構成因子[SIM(新規分子), Syndecan-4, Biglycan, matrix glycoprotein SC1, Osteonectin, Collagen]を同定しました。


(3) Rag1-GFP knock-in mouseを用い、成体骨髄及び胎児肝から早期 Bリンパ球前駆細胞の同定に成功しました。この実験系では、胎児期における最初のRag1-GFP+細胞は、胎生10.5日に胸腺原基を含む頚部領域に検出されました。さらにRag1+細胞は胎生11.0日には肝臓にも出現し、以後胎生16日まで一日約10倍の増加率でBリンパ球が認められました。


(4) ヒトBリンパ球を試験管内で支持する培養法を確立しました。現在、Tリンパ球産生を誘導する培養法確立に取り組んでいます。これらの新しいリンパ球培養法を基盤にした細胞療法や再生療法を行いたいと考えています。


造血幹細胞グループ(責任者:横田)

 造血幹細胞は、自己を複製しながら生涯にわたって血液細胞を供給する能力を持っています。臨床医療では、血液の難病に対する移植治療の根幹を支えている重要な細胞です。私達の研究グループは、造血幹細胞を生体外で増幅して移植治療や再生医療に役立てること、造血幹細胞に人為的な操作を加えることによって血液の難病に対する新しい治療の開発に役立てることを最終目標として、その生理的な性質の解析に取り組んでいます。

(1)造血幹細胞の表面抗原とその機能的役割

造血幹細胞が発現する表面抗原の情報は、造血幹細胞の純化技術を向上させ、造血幹細胞の本質を理解して行く上で極めて重要です。私達の研究グループは、マウスの胎児肝臓に含まれる造血幹細胞分画と早期リンパ球前駆細胞分画の発現遺伝子を比較し、血管内皮関連蛋白質の一つであるendothelial cell-selective adhesion molecule (ESAM)が、造血幹細胞の表面マーカーとして有用であることを発見しました(図1)(1)。この成果は、造血幹細胞の研究に大きく寄与するものとして、血液学の専門誌Bloodの巻頭で紹介されました(2) (http://www.bloodjournal.org/content/113/13/2871.long)。
 継続した研究で、ESAM は定常状態の造血幹細胞だけではなく、活性化状態の造血幹細胞を識別できるマーカーとして有用であり、さらに造血幹細胞が生理的な役割を果たす上でも重要であることを明らかにしました(3)。また最近の成果として、ESAMが急性期の赤血球造血に必須であること、ESAMがヒト造血幹細胞にも発現しており、ESAMの発現強度を指標としてヒトの骨髄・臍帯血から造血幹細胞を濃縮できること、さらにヒト急性骨髄性白血病症例の多くがESAMを発現していることを報告しています(4),(5)。
 今後の研究の展開ですが、胎生期の造血幹細胞の発生と増幅におけるESAMの機能的意義を明らかにする必要があります。この解析を発展させてESAMの機能を分子メカニズムのレベルで明らかにし、その制御によって造血幹細胞の自己複製的増殖を調節する方法の開発につなげていきたいと考えています。さらにESAMはヒトの急性骨髄性白血病の多くに高発現していることから、ESAMとその関連分子を標的とした新しい治療への応用を目指したいと考えています。

(2)造血幹細胞の増殖と分化を調節する環境の解析 —造血幹細胞と血管内皮細胞の相互作用—

 私達の研究グループは、gp130というサイトカン受容体を欠損させたマウスの解析から、造血幹細胞の正常な分化・増殖において血管内皮細胞が極めて重要な役割を果たしていると考えてきました(6)。ESAMに関する研究においても、抗癌剤投与というストレスを受けて活性化した造血幹細胞はESAM強陽性となり、そのほとんどが骨髄類洞の血管内皮周囲に存在することが分かっています (図2)(3)。この見解は、造血幹細胞を支持する骨髄微小環境(造血幹細胞ニッチ)の主たる構成要素が、血管内皮細胞であることを示す最近の論文にも合致するものです(7)。私達は、骨髄内あるいは胎児肝臓内に存在している血管内皮細胞が、ESAMを含む血管内皮関連抗原の機能を介して、造血幹細胞と密な互恵関係にあると考えており、これらの分子メカニズムを精緻に解析することによって、造血幹細胞のみならず造血環境の体外増幅への鍵が見つかると考えています。

(3)造血幹細胞の内的変化 —老化とエピジェネティックな変化の観点から−

 真核生物の細胞核内に保存される遺伝子情報の発現は、その細胞が果たすべき役割に応じて適切に制御されています。膨大な遺伝子情報の中から、必要なものを適切に選択し不必要なものを抑制する分子機構において、遺伝子発現を階層的に調節する転写因子群に加え、多くの遺伝子の発現を包括的に制御するエピジェネティックな機構が近年注目されるようになりました。造血幹細胞の自己複製と分化においても、ジェネティックな機構とエピジェネティックな機構が相補的に働き、遺伝子発現を精巧に調節していると推測されます。
 私達の研究グループは、独自に開発した造血幹細胞と早期リンパ球前駆細胞を分離する方法(8)を用いて解析を行い、造血幹細胞がリンパ球系へ分化する第一歩目にspecial AT-rich sequence binding protein 1 (SATB1)という核内蛋白質が重要な役割をしていることを発見しました。SATB1は、ゲノム全体の構造を調節するエピジェネティックな機構を介して、多くの遺伝子の発現を調節する機能を持つ蛋白です(図3)。SATB1の発現量はリンパ球系への初期分化に伴って増加し、機能的にもリンパ球系への運命決定に強く関与していました。SATB1を欠損させたマウスの造血幹細胞では、リンパ球への分化能力が顕著に障害されていました。
 造血幹細胞は、老化に伴い造血機能が低下し、特にリンパ球を産生する能力を失います。このメカニズムには多くの分子が関与していると推測され、造血機能の老化を克服する観点から重要な研究課題です。私達は、SATB1が造血幹細胞分画に低いレベルで発現しているものの、老化にともなってその発現量が顕著に低下することを見出しました。そこで、老化した造血幹細胞に外来的なSATB1の発現誘導を行いました。その結果、老化した造血幹細胞のリンパ球産生能力が、部分的に回復するという結果を得ました(9)。 (http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/ResearchRelease/2013/06/20130625_1)。この結果は、老化研究が注目されている現状もあって、社会的に大きく採り上げて頂きました(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2504E_V20C13A6CR8000/,
 http://n-seikei.jp/2013/06/post-16599.html, http://usfl.com/news/20658, http://www.sankei.com/west/news/130629/wst1306290071-n1.html, http://news.livedoor.com/article/detail/7816381/) 。
 今後の研究課題として、造血幹細胞においてSATB1がどのような蛋白質と協調して働き、どのような遺伝子群の発現を直接的に制御するのか明らかにする必要があります。さらにその知見に基づき、老化や疾患に伴う造血幹細胞の機能不全の克服を目指したいと考えています。

(4)おわりに

私達の研究グループは、紹介した研究以外にも、骨髄中の間質細胞の性質・妊娠期の母体の造血機能変化の分子メカニズムなど、色々な課題に取り組んでいます。基礎的な研究以外にも、ヒト造血幹細胞移植に関連した臨床研究も計画しています。研究課題の選択に関する制約は特になく、基本的に自由です(もっとも医学から離れた研究課題はちょっと困りますが、、、)。大学院生・ポスドクは、それぞれの興味を大切にして課題を選んでいます。
 臨床の研究室ですので、日々の診療に最善を尽くしつつ、医学の発展へとつながることを切に望み研究に携わっております。研究にすべての時間とエネルギーを投入できる環境ではありませんが、メンバーがそれぞれ力を貸しあい、チームとしての有機的な連携を大切に頑張っています。ご興味のある方は、是非ご連絡ください!

図1. 胎児肝臓の造血幹細胞分画におけるESAMの発現
胎生14.5日目のRag1/GFPノックインマウス胎児肝臓からRag1/GFP陰性細胞を分離し、それらを抗ESAM, c-kit, Sca1抗体を用いてflow cytometryで解析した。(文献(1)より引用)



図2. 骨髄中のESAM陽性造血幹細胞の分布
A. 5-FU投与前(左)と投与後5日目の骨髄組織の免疫染色写真。矢印は巨核球で矢頭が造血幹細胞を示す。

B. 造血幹細胞の分布をVE(血管内皮)ES(骨縁近傍)からの距離で評価した結果。(文献(3)より引用)



図3. 造血幹細胞におけるSATB1の機能の想像図
左:造血幹細胞の核内で、SATB1はユークロマチン領域に分布し、“鳥かご様構造”を形成する。

右:SATB1はクロマチンループ構造を誘導し、ヒストン修飾酵素や転写因子をリクルートして、多数の遺伝子の発現を時間的・空間的に制御していると考えられる。(文献(10)より改変引用)



参考文献
1. Yokota T, Oritani K, Butz S, Kokame K, Kincade PW, Miyata T, Vestweber D, Kanakura Y.  The endothelial antigen ESAM marks primitive hematopoietic progenitors throughout life in mice.  Blood 113:2914-2923 (2009).

2. Mikkola H. ESAM: adding to the hematopoietic toolbox. Blood
113:2871-2872 (2009).

3. Sudo T, Yokota T, Oritani K, Satoh Y, Sugiyama T, Ishida T, Shibayama H, Ezoe S, Fujita N, Tanaka H, Maeda T, Nagasawa T, Kanakura Y. The Endothelial Antigen ESAM Monitors Hematopoietic Stem Cell Status between Quiescence and Self-Renewal.  J Immunol 189:200-210 (2012).

4. Sudo T, Yokota T, Okuzaki D, Ueda T, Ichii M, Ishibashi T, Isono T, Habuchi Y, Oritani K, Kanakura Y. Endothelial Cell-Selective Adhesion Molecule Expression in Hematopoietic Stem/Progenitor Cells Is Essential for Erythropoiesis Recovery after Bone Marrow Injury.  PLoS One 11(4):e0154189 (2016).

5. Ishibashi T, Yokota T, Tanaka H, Ichii M, Sudo T, Satoh Y, Doi Y, Ueda T,
Tanimura A, Hamanaka Y, Ezoe S, Shibayama H, Oritani K, Kanakura Y. ESAM is a novel human hematopoietic stem cell marker associated with a subset of human leukemias. Exp Hematol. 44(4):269-281 (2016).

6. Yao L, Yokota T, Xia L, Kincade PW, McEver RP.  Progressive bone marrow failure in mice lacking the cytokine receptor gp130 in endothelial cells.  Blood 106:4093-4101 (2005).

7. Itkin T, Gur-Cohen S, Spencer JA, Schajnovitz A, Ramasamy SK, Kusumbe AP, Ledergor G, Jung Y, Milo I, Poulos MG, Kalinkovich A, Ludin A, Kollet O, Shakhar G, Butler JM, Rafii S, Adams RH, Scadden DT, Lin CP, Lapidot T. Distinct bone marrow blood vessels differentially regulate haematopoiesis. Nature 532:323-328 (2016).

8. Yokota T, Kouro T, Hirose J, Garrett KP, Gregory SC, Igarashi H, Sakaguchi N, Owen JT, Kincade PW.  Unique properties of fetal lymphoid progenitors identified according to RAG1 gene expression.  Immunity 19:365-375 (2003).

9. Satoh Y, Yokota T, Sudo T, Kondo M, Lai A, Kincade PW, Kouro T, Iida R, Kokame K, Miyata T, Habuchi Y, Matsui K, Tanaka H, Matsumura I, Oritani K, Kohwi-Shigematsu T, Kanakura Y. The Satb1 protein directs hematopoietic stem cell differentiation toward lymphoid lineages. Immunity 38:1105-1115 (2013).

10. 横田貴史 「リンパ球の発生・分化と老化」Annual Review血液2015, 中外医学社, 東京, pp10-26 (2015).

2016.6月改

Anamorsinグループ(責任者:柴山)

エピローグ:新遺伝子のクローニング

1999年11月某日、暗室のUVランプに照らされ、PCR productのラインが、1本、くっきりと浮かび上がった。遺伝子クローニングに成功したようだ。そのPCR productを、シークエンス用のプラスミドに組み込み、塩基配列を読み取った。ATG.../蛋白をコードする最初の配列がみつかった。早速、インターネットのDNAデータバンクにアクセス、登録されている遺伝子塩基配列と比較した。配列の極めて似通った遺伝子がひっかかってきた。ヒトの遺伝子、機能はunknown。配列のみの登録だった。クローニングした遺伝子はマウスの遺伝子。このヒト遺伝子のアナログで、新遺伝子とわかった。新遺伝子を発現プラスミドベクターに組み込み、細胞に強制発現させ、抗アポトーシス作用があるとわかった。ノーザン解析で、種々の細胞に発現し、白血病の細胞にも強くでていた。サイトカイン刺激で、Rasを介し、誘導されるとわかった。遺伝子に名前をつけた。生命科学図書館1階にある外国語辞典のコーナーにあるラテン語を手に取った。Mors "死"。Anamorsin (Anti-apoptotic molecule with Ras association: Ana, against) に決めた。いい名前だ(自画自賛)。モノクローナル抗体も3種類できた。

第1章:Anamorsinノックアウトマウス作製

2000年、春。新しく基礎研究に加わった大学院生とAnamorsinのノックアウトマウスを作るというプロジェクトが始まった。しかし、ノックアウトマウスは、今まで作ったことがない。大学院生も実験の経験がほとんどない。あるのは、AnamorsinのcDNA配列と、やる気だけ。社会環境医学教室の竹田教授の御指導を仰ぎながら、実験は進められた。まずは、genomic DNA取りからスタート。やっと取れたgenomic DNAを制限酵素で切って、シークエンス。その情報を基に、ターゲッテイング ベクターを作製した。次は、マウスES細胞株にエレクトロポレーションでベクターを打ち込み、相同組み換えの起こったクローンをPCR、サザンブロット法にてセレクトし た。400以上のクローンから、25クローン得られた。うち4つのESクローンをマウスの受精卵に打ち込み、キメラマウスを作製。2001年11月12日、最初のキメラマウスが誕生。アグーチと呼ばれる毛の面積の多いキメラがESクローン由来の細胞が多いマウスだ。そのキメラマウスのオスと正常メスマウスを交配し、Anamorsinへテロ欠損マウスの誕生を待った。2002年2月13日、ついにヘテロマウス(全部アグーチ)が誕生した。見た目は、野生型と変わらない。ここまで来たら、あせっても仕方がない。フェノタイプがでるかどうかは、神のみぞ知る。ヘテロマウスもやがて成長し、交配が可能となった。次に生まれてくるのが、待ちに待ったノックアウトマウスである。しかし、半分怖い気持ちもあった。フェノタイプでんかったら、どないしよ。忘れもしな い2002年4月9日、ノックアウトマウスが誕生した。このプロジェクトが始まってから、約2年が経過していた。1匹だけ死んでいた。身体が小さいし、しかも、皮膚の色が青白い。解剖したところ、肝臓や脾臓の造血器組織が萎縮していた。やったー。フェノタイプが出た。しかし、このマウスがノックアウトマウスかどうかは、genotypingをやらないとわからない。結果は、ノックアウトで正しかった。次は、再現性だ。5月14日、2匹目のノックアウトマウスが誕生した。同じく、死亡。身体も小さく、貧血あり。間違いなさそうだ。

第2章:Anamorsinノックアウトマウスの解析

Anamorsinノックアウトマウスは、胎生後期に死ぬ。しかも、貧血だ。血液内科で研究するには、かっこうのフェノタイプが得られた。(何度も言うが、本当によかった!!)次に、このノックアウトマウスの解析を行うことにしたが、なにせ生まれてくるときは全部死んでいるので、生まれる前の胎児マウスを解析しないといけない。マウスは通常、受精後20日で生まれてくるのだが、受精後、12日目、14日目、16日目、18日目の胎児を解析することにした。そのためには、マウスがいつ受精したかわかるようにしないといけない。一晩だけ、オスとメスのヘテロ欠損マウスを一緒にして、翌日の朝には引き離して、約2週間待つのだが、相性の悪いカップルでは、2週間経って、いざ実験しようとメスのマウスをみても、いっこうにお腹が大きくなっていない。残念!!もう一度、交配のやり直しだ。今度は、雰囲気を盛り上げるのに、甘いラブソングでも飼育部屋に流そうかと考えたりもした。このように、マウスの機嫌を損ねないように、妊娠していただき、予定の日に、胎児を取り出して、主に肝臓の細胞を解析した。というのも、胎生後期の造血(二次造血という)は主に肝臓でなされているからだ。胎児肝細胞の形態観察、表面マーカー検索、アポトーシスアッセイ、コロニーアッセイを行った。その結果、ノックアウトマウスの胎児肝では、成熟した赤芽球の減少、アポトーシス細胞の増加、コロニー形成能の低下が認められた。以上より、Anamorsinノックアウトマウスの胎児肝では、造血細胞のアポトーシスの亢進と成熟障害が認められることが判明した。また、ノックアウトマウスと野生型マウスの胎児肝細胞から得たmRNAを用いて、DNAチップ解析をしたところ、ノックアウトマウスでは、Bcl-xLとJak2のmRNAの発現が低下していることがわかった。Bcl-xLとJak2のノックアウトマウスも、胎児肝での二次造血の障害が起きることが報告されており、Anamorsinとこれら分子に何らかの関係がある可能性が考えられた。ここまでのデータを論文にまとめることにした。紆余曲折の末、2004年1月1日の朝、Journal of Experimental Medicineからアクセプトの返事がきた。その上、論文が掲載された号の表紙に選ばれた。こんな名誉なことはないと大喜びした。クローニングから約4年の月日が流れていた。


これで、Anamorsin物語は終わりではありません。さて、次の展開はどうなるのでしょう。この物語を読んで下さっている方は、続きを知りたいでしょうが、もう少し(1年後?)お待ちください。きっと、面白い話ができると思います。では、そのときまで。


A 胎生16.5日目のマウス。Anamorsinノックアウト(AM-/-)マウスは体が小さく、貧血様である。また、肝臓も小さい。
B AM-/-マウスの脾臓は、萎縮している。
C, D 胎児肝の造血細胞。AM-/- (D)では、正常(C)と比べて、未分化な赤芽球のみで、成熟した赤芽球は見られない。B, C, Dの写真は、Journal of Experimental Medicine 2004, 199巻4号の表紙に用いられた。


赤血球グループ(責任者:西村)

発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroxysmal Nocturenal Hemoglobinuria;PNH)は、GPIアンカー型蛋白異常を伴う造血幹細胞疾患であり、さまざまなGPIアンカー型蛋白が血液細胞で欠損す る。GPIアンカー型蛋白の欠損はGPI合成の最初のステップ(ホスファチジルイノシトールにN-アセチルグルコサミンを付加する反応)に関与するPIG-A(phospatidylinositol glycan class-A)遺伝子の体細胞突然変異によるGPIの合成不全が原因であることが、大阪大学微生物病研究所免疫不全疾患研究分野(木下研)との共同研究により明らかにされた。


しかし、このようなGPIアンカー欠損細胞が末梢血で正常細胞を凌駕して優位に増加するのにPIG-Aの異常だけで十分であるかを調べたところ、Pig-aノックアウトES(embryonal stem)細胞を用いて作製したキメラマウスやPig-aノックアウト骨髄細胞の移植実験ではPig-a破壊によるGPIアンカー型蛋白の欠損だけでは異常幹細胞は優位に増殖しなかった。


現在我々の研究室ではPIG-Aの突然変異に続く異常幹細胞のクローナルな拡大のメカニズム(第二の異常)について木下研と共同で解析中である。


再生不良性貧血の経過中にPNHを合併する症例がみられることから、GPIアンカー欠損細胞の拡大メカニズムには免疫学的機序が深く関わっている可能性が指摘されている(選択説)。しかし、末梢血のほとんどの細胞がGPIアンカー欠損細胞でしめてしまうようなPNHでは、そのような免疫学的機序に加え、GPIアンカー欠損細胞自身にさらなる異常がおこり、良性腫瘍的に拡大している可能性も考えられる(良性腫瘍説)。我々の研究室では、GPIアンカー欠損細胞に12番染色体異常のある症例を経験し、その異常を詳しく調べた結果、その染色体異常の切断部位に転写促進因子HMGI-C(HMGA2)を同定した。この遺伝子の異常は間葉系良性腫瘍において高頻度に認められるもねであった。本症例では、HMGI-Cの生体での発現抑制に関与する3'UTRの3分の2を失っており、その蛋白の異常発現を予想させた。現在、マウスを使った実験や他のPNH症例によるHMGI-C関与の普遍性を検討している。


その他、PNHの新規治療薬であるEculizumab(ヒト化抗C5抗体)に関連した臨床研究、核酸医薬(RNAアプタマー)を用いた新規治療法の開発などを行っている。




2009年6月一部改変

血小板グループ(責任者:柏木)

(1) 特発性血小板減少性紫斑病の分子病態

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は自己血小板に対する抗体により血小板が早期に破壊される自己免疫疾患である。研究室では、自己抗原として GPIIb-IIIaおよびGPIb-IXが重要であることを明らかにしてきたが、さらに自己抗原の局在部位の同定を目指している。 また臨床研究として、抗CD40L抗体、TPO、H.Pylori除菌療法などの新規治療法にも取り組んでいる。

(2) 血小板無力症の遺伝子解析

血小板無力症はGPIIb-IIIaの先天的な質的・量的異常症であり、研究室では全国からの解析依頼もあり、現在までに44症例の解析を行い25 症例においてその遺伝子異常を明らかにしている。その中で、リガンド結合異常に起因する症例やシグナル伝達異常の症例を同定している。

(3) ADP受容体異常症の分子病態

先天性血小板異常症の分子異常の同定に積極的に取り組んでおり、本邦初(世界で5例目)のADP受容体、P2Y12異常症を同定しその病態解析を行っている。

(4) CD36(血小板膜GPIV)欠損の遺伝子異常

研究室では、本邦において健常人の約3%において血小板CD36が欠如していることを初めて明らかにした。その内の約1割(つまり0.3%)におい ては単球などの他の組織にもCD36が発現しない完全欠損(Type I)であり、その遺伝子異常の同定に成功している。しかし、残りの9割では血小板のみCD36が欠損しており(Type II)、血小板のみCD36が欠損する機序は未だ不明である。



血小板無力症ではGPIIbおよびGPIIIaが著減している。

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