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土居 由貴子 先生、横田 貴史 先生の論文が米国科学誌「Cell Reports」(オンライン)に掲載されました。

2018-07-04 芦田 愛
土居 由貴子 先生、横田 貴史 先生の論文「Variable SATB1 Levels Regulate Hematopoietic Stem Cell Heterogeneity with Distinct Lineage Fate.」が2018年6月13日(水)午前1時(日本時間)に米国科学誌「Cell Reports」(オンライン)に掲載されました。

Cell Rep. 2018 Jun 12;23(11):3223-3235. doi: 10.1016/j.celrep.2018.05.042.
Variable SATB1 Levels Regulate Hematopoietic Stem Cell Heterogeneity with Distinct Lineage Fate.
Doi Y, Yokota T, Satoh Y, Okuzaki D, Tokunaga M, Ishibashi T, Sudo T, Ueda T, Shingai Y, Ichii M, Tanimura A, Ezoe S, Shibayama H, Kohwi-Shigematsu T, Takeda J, Oritani K, Kanakura Y.

大阪大学大学院医学系研究科・医学部ホームページ > 研究活動 > プレスリリース > 2018年
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2018/20180613_1

海外配信

クロマチン構造調節タンパク質SATB1が造血幹細胞の多能性の維持に重要であることを解明


研究成果のポイント

  • クロマチン構造調節タンパク質SATB1※1の発現量が、造血幹細胞の自己複製能力と、リンパ球系血液細胞への分化能力の違いに関与することを発見した。
  • 遺伝子改変マウスを作製し、成体マウスの生体内における造血幹細胞からリンパ球系への分化の最初期に起こる現象を観察することができた。
  • リンパ球の分化制御技術の発展、免疫力低下が関与する感染症や造血器疾患治療への応用が期待される。

概要

大阪大学大学院医学系研究科の横田貴史講師(血液・腫瘍内科学)、同医学部附属病院の土居由貴子医員(医師)(血液・腫瘍内科)、同大学院医学系研究科の金倉譲教授(血液・腫瘍内科学)らの研究グループは、クロマチン構造制御タンパク質SATB1の発現量が、造血幹細胞の自己複製能力の差異とリンパ球分化能力の差異の両方に関与することを明らかにしました。

これまで、横田講師らを含む複数の研究グループが、SATB1が造血幹細胞の機能にとって重要なタンパク質であることを示してきましたが、それらは血液以外にも影響するようなSATB1欠損マウスを用いた研究や、マウスの胎児の細胞を用いた研究であったため、成体マウスの体内で起きている生理的な現象を観察したものとは言えませんでした。また、造血幹細胞は、生涯にわたり造血を維持するために自己複製を繰り返す一方で、全ての種類の血液細胞に分化できる細胞と考えられていますが、リンパ球系血液細胞の性質を獲得する分化の最初の一歩がどのように始まるのかについては解明されていませんでした。

今回、横田講師らの研究グループは、血液細胞でのみSATB1を欠損した遺伝子改変マウスと、SATB1遺伝子の発現する生理的な条件下で赤色蛍光タンパク質が発現するようにしたレポーターマウスを作製しました。それらを調べることで、成体の造血幹細胞の正常な機能維持にSATB1が不可欠であることを確認しました。さらに、造血幹細胞にはSATB1の発現量の多いものと少ないものが混在しており、それらはいずれも自己複製するうちにSATB1発現量が変化すること、またSATB1発現量が多い造血幹細胞ほどリンパ球分化能力が高いことを解明しました。これにより、再生医療や遺伝子治療を通じ、免疫異常の関与する疾患の治療法の進歩が期待されます。


図1 造血幹細胞の多様性を示す概念図
灰色の円はマウスの個体を、小さい円は個体内の造血幹細胞を表しており、色が赤くなるほど、SATB1の発現量が高いことを示している。造血幹細胞のSATB1発現量が低い方から高い方へ変化するにつれて、リンパ球産生能力や造血再構築能力は高くなっていく。一方で、造血幹細胞のマーカーであるCD150発現量はその逆となっていた。

大阪大学大学院医学系研究科・医学部ホームページ より抜粋