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7. 造血骨髄微小環境の解析

2003年に骨芽細胞が造血幹細胞維持に必須である事が報告されて以来、造血微小環境(ニッチ)の重要性が広く知られるようになっている。旧第2内科血液グループで行われていた、アディポネクチンの造血に与える影響についての解析(J Immunol 2003)は、合併後も研究が継続され、織谷、氏家、政家は、そのメカニズムについての検討を行った(J Cell Biochem 2006, Exp Hematol 2007)。一井は横田らと共に、造血幹細胞維持とリンパ球への分化に対する微小環境による制御機構についての研究を行い、特に、Wntシグナルの作用についての検討を深めてきた。横田は、Wnt関連分子secreted Frizzled-related protein 1 (sFRP1)をestrogen誘導蛋白として同定し、ニッチから産生されるsFRP1がリンパ球初期分化を著明に抑制することを明らかにした(J Immunol 2008)。一井は、従来報告されていた直接作用とは別に、Wntのカノニカル・シグナル経路が、造血微小環境であるストローマ細胞上のdecorin蛋白発現を誘導する事によって、造血幹細胞維持とBリンパ球分化を間接的に制御している事を見出した(Blood 2012)。
同時に、一井と織谷らは、ヒトにおけるリンパ球初期分化についての解析も進めてきた。ヒト間葉系幹細胞(MSC)を支持細胞と用いた、異種細胞を排したヒトB細胞分化培養系の確立に成功し、ヒトMSCがBリンパ球分化を促進する能力に優れている事を示した(Exp Hematol 2008)。また、血球細胞同士の相互作用が分化に与える影響(J Immunol Methods 2010)、ヒトリンパ球分化各段階のCD10発現についての詳細な解析(PLoS One  2010)について報告した。